ゴールデン・グローブ賞受賞に輝く知性派名優エド・ハリスがピュリッツァー賞受賞の原作伝記にインスパイア、製作・主演、そして初監督にまで乗り出した傑作の誕生だ。米モダン・アート界初のスター、実在の天才画家ジャクソン・ポロックと彼を支え続けた女性アーティスト、リー・クラズナーとの鮮烈な完全燃焼の人生を描くあまりにも切ない感動ラブ・ストーリー。全世界の辛口メディア&映画賞が激賞し、第73回アカデミー賞主要2部門〈主演男優・助演女優〉ダブル・ノミネート&受賞の快挙をエド・ハリスは初監督作品で成し遂げた。
 NYグリニッジビレッジの都会美、対照的な避暑地イーストハンプトンでのスローライフの先駆者としての田舎暮らし。この秋ディオール、プラダも注目のエレガントでセクシーな40-50年代ファッションも必見。B・ホリディ、グッドマンのジャズが彩る人生の光と影、その苦悩を癒しに昇華するトム・ウェイツのテーマ曲にも感動がとまらない。
 
 1949年8月、『ライフ』誌に全段抜きの見出しが躍った。――“ジャクソン・ポロック:米国で最も偉大な画家か?” 記事にはカンヴァスをバックにポーズをとる彼の写真が添えられていた。着古した黒のジャケットにブルー・ジーンズをはいたポロックは、挑戦的に胸の前で腕を組んでいた。
 彼はあまりに鋭敏でピュアな感性のゆえに、自らを表現せずにはいられない気持ちと世間をシャットアウトしたい思いとの間でせめぎあっていた。そんな彼の心と創作を献身的に支えたのが女性アーティスト、リー・クラズナーだった。だが、ポロックの脆い精神はやがてきりもみ降下を始める。
 そして、1956年夏のある霧の晩、酒を飲み、二人の女性を乗せてイースト・ハンプトンの道路を疾走していたポロックは、路傍の木に激突して44年の生涯を閉じた。人は彼を“アート界のジェームズ・ディーン”と呼んだ……。彼の〈死〉は自殺か事故か? その謎は観客にゆだねられることになるのだが──。

 ピュリッツァー賞を受賞したノンフィクション『JACKSON POLLOCK:AN AMERICAN SAGA』をもとに、エド・ハリスが10年間の構想の末につくったこの作品は、単なる画家の伝記映画ではない。もしポロックがリー・クラズナーと出会わなかったら、はたしてあのような傑作群が生まれていただろうか。リーは誰よりもポロックの才能を認め、彼をプロデュースした。彼女はポロックの子供のような純粋さ=ネオテニー(幼児性)を愛し、ときに母のように温かく包み込み、その荒ぶる魂を鎮めようと苦悩した。これは、ポロックとリー・クラズナーの切ない恋の物語。ほろ苦い、大人のトゥルー・ラブ・ストーリーでもある。〈彼女がいなければ死んでいた〉の彼の言葉どおり、彼女の不在中に死を選ぶ?ポロック──。  
死は彼女への最大の愛情表現〈永遠のラブ・レター〉だったのか──。そんなあまりに切ないラブ・レターを受け取った彼女は〈2人だけのアトリエ〉で、彼女自身の旺盛な創作活動を続けたという──。  愛が終わって哀しいのではなく、愛が完了して豊穣であるという逞しさと、どんなに苦しい生も死という等しい救済が用意されているという〈希望〉のラブ・ストーリー。  自らポロックを演じつつ初めてメガホンをとったのは、「トゥルーマン・ショー」でゴールデン・グローブ賞を受賞し、同作と「アポロ13」、本作、「めぐりあう時間たち」で4度アカデミー賞にノミネートされている知性派俳優エド・ハリス。1990年代の初めから映画化の構想を練っていただけに、確信に満ちた精緻な演出でポロックの潔い“自然”な生き方、“偶然”を排除した創作との対峙、リーとの愛に満ちた関係を奥行き深く描き出している。映画化を決めて以来10年もの間ずっと絵を描き続けてきたという彼は、“ドリッピング/ポーリング”をはじめとするポロック独特の創作スタイルを再現して鬼気迫るリアリティ。まるでポロックの魂が乗り移ったような緊迫感と生命力溢れる演技で多面的な人間性を体現し、見る者を圧倒する。
 リー・クラズナー役に選ばれたのは「スペース・カウボーイ」「ジョー・ブラックをよろしく」のマルシア・ゲイ・ハーデン。“ワンダフルでファビュラスで、しかしときにぞっとするような”結婚生活の中でポロックを心身ともに支えた女性アーティストの複雑な心理を繊細かつ力強く演じ、みごとアカデミー助演女優賞に輝いた。
 また、エド・ハリスの私生活上のパートナーでもあるエイミー・マディガンが、ポロックのパトロン、ペギー・グッゲンハイムに、「ビューティフル・マインド」でアカデミー助演女優賞を受賞したジェニファー・コネリーが、ポロックの最期のときに車に同乗していた恋人ルース・クリグマンに扮している。
 撮影は主にニューヨークとロングアイランドのイースト・ハンプトンにあるポロックとクラズナーの地所で行われ、プロダクション・デザイナー、マーク・フリードバーグが二人の家や創作を行った納屋などを復元。撮影監督リサ・リンズラーが端正で落ち着いた映像の中に、画家ポロックの強烈な個性を表現してみせる。さらに衣装デザイナー、デイヴィッド・ロビンソンが、時代の先を行くポロックとクラズナーのモダンなスタイルを再現して当時の空気に彩りを添えている。
2000年ソニー・ピクチャーズ・クラシックス作品
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
原題 POLLOCK/VV/2時間3分/6巻/3,384m/DOLBY、SR/字幕:川本Y子
サントラ:キング・インターナショナル発売
テーマ曲:トム・ウェイツ “THE TIME IS TURNING”収録