南北アメリカ大陸のあいだにヘビのように横たわっているパナマは、1903年、コロンビアから独立を果たした共和国。この独立の際、アメリカは運河地帯の永久支配権を条件に運動を支援。独立後のパナマと正式に条約を結び、8年の歳月と3億2千万ドルの資金を投じて、大西洋側のリモン湾と太平洋側のパナマ湾を結ぶパナマ運河を建設した 。

運河は、パナマに経済的な繁栄をもたらしたが、民族主義者のアウモジオ・アリアス・マドリッドが大統領に選ばれた1932年ごろから、運河を含む全領土の統治を求める声が高まり、同時に反米感情も高まっていった。1959年、運河地帯をパナマの領土だと主張する人々が、パナマ国旗を掲げようと運河地帯に侵入を試み、米軍とにらみあう事件が勃発。
さらに、1964年には、アメリカの運河支配に反対する学生たちの暴動が起こり 、4人のアメリカ市民と20人のパナマ人が犠牲になった。この動きを受け、パナマとアメリカのあいだでは運河条約を見直す交渉が行われたが、合意を見るまでには至らなかった。

新運河条約がようやく調印に漕ぎつけたのは、ジミー・カーターが米大統領の座にあった1977年9月のこと。以下の概要を記した条約が、アメリカ、パナマの両議会で承 認された。

1.アメリカは、運河に関する法的な権限を2000年までにパナマに譲渡し、1999年12月31日までは、新たに設立するパナマ運河委員会が運河の維持にあたる。

2.アメリカ、パナマ両国は、運河が、あらゆる国の艦船の平和的な通過に開かれることを保証する。譲渡までのあいだ、運河の防衛にはパナマとアメリカが共同であたり、万一運河の安全が脅かされた場合はアメリカの軍事介入が許される。

「テイラー・オブ・パナマ」は、この条約にある"パナマ運河返還"が執行された後のパナマが背景になっている。劇中のハリーは、「返還後の運河をパナマ政府が他国に売却するかもしれない」という作り話をでっちあげるが、それはまったく根拠のない話でもない。
というのも、現在の運河は、スーパータンカーや軍艦が通れないほど狭く浅いため、これを譲り受けたパナマは、拡大工事をするか、新たに海面運河を建設するかの選択を迫られているからだ。その資金を、どこからどんな方法で調達するかという問題は、パナマの経済と軍事の双方に関わる重要な課題なのだ。
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