今 敏監督コメント
何故起こるのかは分かりませんが、それは世に遍在しています。
「奇跡と偶然」
しかし当事者にとって、いかに神秘や運命を感じさせる出来事も、我が物顔に世界をおおっている論理性や合理性という「官軍」の前には勝ち目がありません。
「証拠は? 根拠は? ない? 何と非科学的な!」
これら科学の論理兵器によって異界へと押しやられた「奇跡と偶然」を健全に回復しようというのが本作の試みです。
ホームレスという、ある意味分かりやすい不幸な境遇におかれた本作の主人公たちは、クリスマスに“奇跡”の赤ん坊を拾うことである扉を開くのです。その扉の向こうに広がっているのは日常に重なる豊かな異界です。
やかましくも悲しく、寂しさと活力に溢れるキャラクターたちが繰り広げる、可笑しいのか悲しいのかよく分からない、素晴らしい矛盾と偶然と奇跡に満ちた世界をお楽しみ下さい。
今 敏監督作品紹介
今 敏監督第1作映画『パーフェクトブルー』
(1997年/カラー/ビスタサイズ/81分/R-15指定/原作:竹内義和/監督:今 敏/脚本:村井さだゆき/出演:岩男潤子、松本梨香ほか/配給:レックスエンタテイメント)
今 敏監督の名を世界に知らしめた第1作目。一種のサイコ・ホラー映画であるが、リアルとファンタジーの境界を曖昧にする映像表現で、現代が持つ心理的な怖さ描写を可能にした。
──アイドルグループの一員だった未麻は、売れ行き不振のため女優としての転身をはかるが、役に恵まれず不遇続きだった。事務所の方針により、ドラマ中で大胆にもレイプシーンを演じた未麻は、やっとイメージチェンジに成功した。だがそのときから、未麻はアイドル時代の自分の幻影に苦しめられるようになってしまった。そして、未麻の脱アイドルに荷担した脚本家ら関係者が、何者かに次々と惨殺されていく事件が発生する。はたして犯人は未麻自身なのだろうか……。
今 敏監督第2作映画『千年女優』
(2002年/カラー/ビスタサイズ/81分/監督:今 敏/脚本:村井さだゆき/出演:出演:荘司美代子、小山茉美、折笠富美子ほか/配給:クロックワークス)
ドリームワークスの世界配給権取得が話題となった監督第2作。現実と映画の中が次第に混淆していき、その中からある女性の人生観が見えるという壮大な構成が評判となった。
──一世を風靡した映画女優、藤原千代子。長らく隠遁していた彼女の元に、一代記を取材しようと二人のビデオクルーが訪れる。千代子は戦争の足音が近づく帝都東京でスカウトされ映画女優となった。しかしその隠された目的は、たった一度だけ出会った初恋の殿方と再会すること。彼を追い求める千代子の話は、戦前の満州から時空を超えて戦国時代へつながり、二人のインタビューアーを翻弄する。千代子は江戸や明治時代を駆け抜け、現在すらも追い越してはるか未来の月面へとひた走る。その果てに千代子の見るものとは……?
●「千年女優」受賞一覧
平成13年度(第5回)文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞
第6回ファンタジア映画祭(カナダ)最優秀アニメーション映画賞、および芸術的革新賞
第33回シッチェス映画祭(スペイン)最優秀アジア映画作品賞
第57回毎日映画コンクール大藤信郎賞
東京アニメアワード劇場映画部門最優秀作品賞(東京アニメフェア2003)
※同・個人賞の美術賞:『千年女優』『東京ゴッドファーザーズ』の池信孝が受賞
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