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メイキング
メイキング第3回は、『東京ゴッドファーザーズ』“タイトル・ロール”をフューチャーっ! タイトル=題名、ロール=役。つまり、題名にもなってる役=主役ってことで、タイトルに出てくる役を与えられた役者さんは、「主役よ、主役」とわーわーきゃーきゃー大喜び。それがタイトルロール。 『白雪姫』なら“白雪姫”。『ハムレット』なら“ハムレット”。『東京ゴッドファーザーズ』なら、もちろん、“ゴッドファーザーズな3人組”っ! んがっ! 『東京ゴッドファーザーズ』には、もうひとり。しかも“ゴッドファーザーズ3人組”と違って、固有名詞で登場のキャラクターありっ! そう、もちろんそれが“東京”! 『東京ゴッドファーザーズ』では、“東京”という街そのものも、まさしくひとつのタイトル・ロール=主役!
ってことで、もうひとりの隠れた主役=“東京”をしっかりたっぷり牛耳った美術監督・池信孝氏に、隠れ主役キャラ“東京”創作のヒミツを暴露してもらいますっ!

(1)コンテ「非人道的な監督の要求(?)」
(2)輪郭「ディテールでディテールを隠す」
(3)顔「隠れた第一人称? 主人公を見つめる街の視点」+おまけ付き


#3:背景美術

(1)

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通常のアニメ制作の場合、「キャラクター設定集」と同じく、美術にも「美術設定集」なる基本から応用まで様々な角度でしたためた分厚い画集が存在し、美術スタッフはそれを元に各シーンの背景となる絵を作り上げていく。 今回、やたらめったら注目を浴びちゃった超・超・緻密な『東京ゴッドファーザーズ』の背景だけに、さぞや詳細でド分厚い設定集が・・・・・・と思いきや、実は、『東京ゴッドファーザーズ』にはその「美術設定」なるものが、ほとんど存在しない。・・・・・・い、異常なことと思われます。
池「今さんの作品の場合、コンテがかっちり出来上がってるから、それがある程度、設定になっちゃうんですね。だから僕の方で設定を起こす必要があって作ったのは、ハナちゃんが元いたバー「Tower Angel」のところ。あそこを、ざっとこんな感じかなってラフを描いたのと、 それからマリアの部屋。位置関係はこんな感じで、アパートのつくりはこんな感じじゃないですか、って大ラフを出したくらいかな。
それに、今回はぽんぽんぽんぽん場所が移っていくんで、明確に設定が必要なところはそんなになかったんですね。ましてや、街中だし。キャラクターが背景と絡む部分が少なかったから、ある程度のデザインだけ作ってもらえば、あとはそれにちょっと色づけしてやればいいって感じだったので」

・・・・・・“だけ”とか“ちょっと”とか、軽ーく言ってのけられる池氏ですが、普通は監督のこの要求度の高いコンテを見ただけで、涙が出るものと思われます、たぶん。
池「一番初めの打ち合わせでコンテを見せられた時、監督に『背景はご覧の通り、大変だよ』と。確かに作業は決して楽じゃないな、とは思いましたけど。ビルも一杯あるし(笑)。しかもコンテでもあれだけ描きこんであるんだから、描かないわけにいかない。でも、面白そうだな、と」



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実際、コンテをそのまま拡大して「美術原図」とするという“非人道的な(←監督本人談)”発注が、いくつかのシーンで行われたり、 また別のカットでは、監督が撮ってきた写真を「こんな感じで」と渡されオシマイという、またもや“非人道的な”発注も行われたが、 結果はご覧の通り。非人道的発注がべつに非人道的発注じゃなかったのかも・・・・・・なレベルに押し上げてしまうから恐ろしい。うーん。 ちなみに、写真を渡されただけのシーンが、上のCUT158辺り。しかもその写真、監督の撮ってきたのは、草木生い茂る<夏場の写真。それを見せて「葉ッパは枯らして、よろしく」という非人道的極まりない、発注に怒りもせず、仕上げた背景は、池氏の中でかなり納得のいく仕上がりになっているらしい。
池「これはデジタルの産物ですね。枯れ木っていうのは、先端にいくに従って細くなっていって、全体に溶け込んでいく。そこまでの細かい線っていうのは、手描きでは描けないから、結構、これまでのアニメでは表現を省いてきた部分なんです。それが今回はデジタルを使うことで上手く出せたかな、と。作業としては、初めにもうちょっとおおざっぱな木を描いておいて、それを別レイヤーにして、縮小、貼る、縮小、貼る、のくりかえしなんですけど、でもそうやって細かく作りこんでいくことで、それなりに枯れ木の迫力が出たな、と満足してます」
といってももちろん、『東京ゴッドファーザーズ』の一見写実的に感じられる背景の秘密が、撮ってきた資料写真をそのまま絵に移したり、デジタル技術に頼ることにあるなんて思ったら大間違い。
池「監督とメインスタッフみんなでロケハンに行ったのは、都庁周辺の中央公園と、月島や勝鬨橋の辺りくらい。 中央公園にあるオブジェは実際に登場したりしますが、その向こうの景色は、画面の中のでっちあげというか、頭の中でコラージュしたものです。今回そういうのが多いんですよ。面白そうなものと面白そうなものを参考にして、頭の中で張り合わせちゃっう。ビルなんかでもデザインを変えたりとか」
ロケハンで感じ取ったものをそのまま紙に移すという作業とは全く異なる。参考写真はあくまで参考。それぞれのシーンが存在する画面を作り上げるために、引くものもあれば、足すものもある。
池「今回は、これまでなら、もうちょっとものを省いただろうな、というところをかなり省かないでやってますね。街中の、特に道路際にあるもの。たとえば、窓から道路をちょっと見下ろすだけでも、標識があり、信号機があり、ガードレールがあり、そのガードレールの脇のところには妙な配電盤があり、植え込みがあり、さらにノボリがあったりする。 そういうありとあらゆるものが雑然とある風景を、ある意味じゃ整理しない。レイアウトとしては整理されてるんだけど、そこにあるものまで変に整理しちゃうと、綺麗な街になっちゃう。ひとつノボリを立てるだけでも、その場所の雰囲気が発生する。 誰かそこで生活してる人がいる余韻みたいなものを残すようにしました」


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