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2006年9月 8日
■What's New! x Mailnews 特別企画■『サムサッカー』スペシャルコラム

『サムサッカー』オフィシャルサイトはこちら
今日のWhat's New!は趣向を変えて、■What's New! x Mailnews 特別企画■として『サムサッカー』の魅力をご紹介致します。

ありのままの自分を認めることが前向きに生きる秘訣だと教えてくれる、青春映画の傑作『サムサッカー』。

 これまでもいくつもの青春映画の傑作がスクリーンを飾り、私たちを深い感動に導いてくれたが、『サムサッカー』のようにユニークなアプローチの作品はちょっと例がない。ウォルター・キルンの同名小説をもとにしたストーリーは、誰もがひとつぐらいはある“クセ”を題材にしているのだ。親指しゃぶりを止められない少年が、周囲の大人たちのことばに翻弄されながらも、次第に成長していく――その姿を瑞々しく描いて、心に沁みる仕上がりとなっている。クセを入り口にして、現代を生きる人々の心の喪失感までも浮かび上がらせる。繊細で、ユーモラスで愛おしくなる21世紀の青春映画。映像にみなぎる魅力のひとつひとつをここに挙げてみよう。

①原作のテーマを咀嚼し、素敵な映像に仕立てたマイク・ミルズに注目!
 この作品の脚本と監督を務めたのはマイク・ミルズ。1990年代よりグラフィック・アーティスト、CFやPV、短編映画を手がける映像作家、ミュージッシャンとして活躍してきたカリスマで、時代とともに疾走してきた。あのソフィア・コッポラや兄のロマン・コッポラとともに映像エージェンシー“ディレクターズ・ビューロー”を創設するなど目覚しい活動を展開しているが、ありがちなカッコよさだけを狙う存在ではない。初の長編劇場用映画となるこの作品をみれば、彼の姿勢が分かる。なによりも原作に込められたテーマをきっちりと映像に焼付けるために脚本を磨き上げているのだ。ここでは主人公の少年のみならず、周囲の大人たちが“大人になったことで何かを失った”と感じ、アイデンティティに悩んでいることをも紡いでいる。映像的な斬新さを狙うよりも、ストーリーを的確に語ることに徹した演出。その語り口はさりげなく、みるものの心を掴む。

 どんな人でもコンプレックスやトラウマを抱えて生きている。それがゆえに自信が持てなかったり、あるいは逆に虚勢をはったりすることにもなるのだが、ミルズは“完璧であろうとしなくてもいい。自分が思い描いた理想と違っても、ありのままを受け入れて生きること”が素晴らしいと訴える。そのまっとうなメッセージになにより感動を禁じえない。

②ミルズのもとに集まった、輝きを持った俳優たち。
 この作品の大きな話題は、もちろんキャスティングにある。主人公の少年を演じるのは100人に及ぶオーディションから選ばれたルー・プッチ。10歳から演技を始め『サウンド・オブ・ミュージック』などの舞台に出演した経験があるといっても、無名に近い存在。その彼をあえて選んだミルズはなるほど先見の明があった。自分に自信が持てずに、内気で神経質なキャラクターがぴったりとはまっている。どこか中性的な容姿が思春期の危うさを秘めていて、スター性十分、鮮烈に焼きつく。この作品の演技でオファーが次々と舞い込んだのも頷けるところだ。彼を発掘したことでも、この作品の功績は大きい。

 プッチを囲んで、そうそうたる俳優が居並んでいる。少年を温かく見守りながら、自分の生き方に変化を求めている母親には『ナルニア国物語/第1章ライオンと魔女』で白い魔女を演じたティルダ・スウィントン。製作総指揮に名を連ねるほど、この作品に惚れ込んだ彼女はちょっと風変わりなところのある女性像を奥行きのある演技で表現する。生きていることの喪失感をにじませて、共感度は高い。同様に、凡庸であることを自覚している父に扮した『メン・イン・ブラック』のヴィンセント・ドノフリオ、少年を改造しようとする教師を演じた『スウィンガーズ』のヴィンス・ヴォーン、母の憧れのテレビ俳優を演じる『トラフィック』のベンジャミン・ブラットが、いずれも人生のペーソスを漂わせる演技を披露してくれる。

 忘れていけないのはキアヌ・リーヴスの存在だ。少年にさまざまなサジェスチョンを与える歯医者役を軽妙に演じきる。脚本に惹かれて、『マトリックス』シリーズ後に出演。そこには単なるヒーロー・スターではないという自負がほのみえる。

③サバービアの心情と印象的な音楽。
 舞台となる都市近郊の住宅地も映画の個性をさらに深めている。典型的な中流家庭が集まる地域、そこに住む人々は生活の苦労がない、生ぬるい日常を送っている。映画はこのままでいいのかという気持ちを抱きながら毎日を過ごしていく人々のやるせなさを、映像に焼き付ける。現代、日本に住む人々の多くがこうした想いに共感するはずだ。

 落とせないのは音楽の素晴らしさ。数多くのPVを手がけてきたミルズの感性は抜群。最初はエリオット・スミスがサントラを手がける予定だったが、彼が自ら生命を絶ったために、ポリフォニックス・スプリーのティム・デラフターが音楽を担当、ミルズが大きなインスピレーションを受けたスミスの楽曲も挿入されている。

『サムサッカー』オフィシャルサイト
9月23日(土)、シネマライズにてロードショー!

Posted by a. MOVIE at 2006年9月 8日 09:00